当初の怒りは一種の気
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当初の怒りは一種の気
ポレン王妃は小男の顔をじっと見つめていた。そして深いため息をついた。「やっぱりお知らせしておいた方がいいと思う わ、ケルダー」彼女は低く静かな声で言った。「おかあさまがいらしてるのよ」
突然シルクの顔が蒼白になった。「ここに、この宮殿のなかにいるのか」
王妃はうなずいた。「西の翼にいらっしゃるわ。あのお方が好きだったお庭に一番近いお部屋をさしあげたの」
シルクはがたがた震えだした。顔はあいかわらず灰のように真っ白だった。「いつからいるんだ」その声には緊張がみなぎっていた。
「もう数週間になるわね。わたしの赤ちゃんが生まれる直前にいらしたのだから」
「彼女のようすはどうなんだ」
「あいかわらずよ」小さな金髪の王妃の顔が悲しみで曇った。「でも会ってあげなくちゃいけないわ」
シルクは深く息を吸いこんで、肩を怒らせた。だがその顔にはあいかわらず打ちのめされたような表情が浮かんでいた。「そうだな、会うしかないだろうな」かれは自分自「まだ彼女の機嫌はなおらないのかい」ローダー王がたずねた。
「もうありとあらゆる家具は壊しつくしてしまった」バラクは答えた。「残るのは人間だけなのさ」
それ以後ポルガラが自室から出るたびに、警告のささやきがまたたくまに広がり、〈鉄拳〉の要塞の廊下という廊下は空っぽになった。彼女の命令はほとんど侍女を通じて伝えられたが、その内容は多かれ少なかれ、アンヘグ王に下した最初のものと変わらなかった。即刻行方不明の三人組を引っ捕らえ、彼女の面前に連れてくること。
続く何日間のうちに、セ?ネドラの難しさに変わっていった。人々はポルガラを避けるように彼女のことも避けるようになった――ただ一人優しいアダーラを除いては。彼女は小さい王女のかんしゃくを穏やかな我慢強さでよく耐えた。二人はほとんどの時間を彼女たちの居室に面した庭で過ごした。そこなら人に聞かれることなくセ?ネドラは胸のうっぷんを心おきなくぶちまけることができるからである。
暖かい一日だった。殺風景なリヴァにも春は訪れていた。そして庭園の真ん中のわずかな芝生も今では青々とした緑に覆われていた。花壇に咲きほこるピンクや青や炎のようにまっ赤な花弁は、花から花へとキスを運ぶのに忙しい明るい黄色い蜂たちの訪問を受けて揺れていた。だが今のセ?ネドラはキスのことなど思い出したくもなかった。お気にいりのドリュアドのうす緑色の長衣をまとった小さな王女は、罪のない巻毛をぎりぎり噛みしめながら、忍耐強いアダーラに世の男の不実さについてとうとうとまくしたてるのだった。
センダリアのライラ王妃が庭にいる二人を見つけたのは、その日の午後なかばになってからだった。「まあ、あなたたちそこにいらしたのね」ぽっちゃりした小さな王妃がにこにこ笑いながら近づいてきた。いつものようにその王冠は少し片方に傾いていた。
「わたしたち、あなたを探していたのよ」
「何で?」セ?ネドラの受け答えはいささか不作法だった。
ライラ王妃は立ちどまると、とがめるような目で王女を見た。