くいい表せな
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
くいい表せな
容器をふたたび手にしようとしたとき、容器が岩屑の斜面をすべり落ち、その音があたりに響きわたった。わたしは思わず冷汗をかいたが、すぐにまえにとびだして、それ以上の音をたてることなく容器を手にした――しかし一瞬の後、足もとの岩屑が崩れ、突如としてかなりの音がした。
その音がわたしの破滅の原因だった。というのも、真偽は別として、背後の遙か遠くから、実に恐ろしい具合に、その音に応える音がしたように思ったからだ。地球上のどんな音とも似ていないし、言葉ではまったい、甲高い口笛のような音を、わたしは耳にしたような気がした。もしもその音がわたしの想像にすぎないのなら、そのあとにおこったことは残忍な皮肉ということになる――その音におびえることがなかったら、次の出来事はおこることがなかったかもしれない。
しかし事実をいえば、わたしの逆傾聽流年的腳步,闕闕心香成瓣朝聖者傳遞潔淨的溫度選擇離塵世稍稍高一點的僻靜所在不適喧嘩但求安寧
上はもう完全に救いがたいものになっていた。懐中電燈を手にし、容器を弱よわしくつかみあげると、やみくもに前方へとびだしていった。この悪夢の廃墟から、遙か頭上に広がる月光と砂漠の世界に駆けだしたいという狂おしい欲求以外、頭のなかには何もなかった。
陥没した天井のむこうの広大な闇にそびえる岩屑の山にたどりつき、先の尖った岩屑や砕石からなる急な斜面をよじ登りながら、何度となく体に傷を負ったのが、はたしていつのことであるのやら、わたしにはほとんどわからない。
そしてあの大災難がおこったのだ。前方がいきなり傾斜していることにも気づかず、盲滅法に頂上をこえたものだから、足がすべってしまい、崩れ落ちる石塊の猛烈な傾《なだれ》に呑みこまれてしまった。その連続砲撃のような大音響は、大地を揺がす耳を聾《ろう》せんばかりの反響をともない、暗澹たる洞窟の大気をつんざいた。
わたしにはこの混沌から逃れでるときの記憶はないが、つかのま断片的に意識に甦るものは、なおも容器と懐中電燈を手にしたまま、大音響のとどろく回廊を、突進したり、つまずいたり、やっとの思いで足を進めたりして、前進したことを伝えている。
やがて、恐れていたあの原初の玄武岩造りの地下室に近づいたそのとき、まったくの狂気が訪れた。傾《なだれ》の反響が消えると、先ほど耳にしたように思った、悍ましくも異界的な口笛に似た音が、繰返し聞こえるようになったのだ。今度は疑いようもなかった――さらにひどいことに、その音はわたしの背後からではなく、前方から聞こえてきた。
おそらくわたしはそのとき悲鳴をあげたのだろう。先住種族の地獄めいた玄武岩造りの地下室を飛ぶように駆け抜けながら、もはやふさがれてはいない果しない暗黒の口からわきおこる、あの呪わしい音を耳にしている自分の姿が、ぼんやり